あの夏に僕がここへ来た理由
「もし、本当に記憶喪失だとしたら、記憶が戻ったら一体どうするつもりなんだ?
もしかしたら彼女がいるかもしれないし、最悪、奥さんがいることだってあり得る。
もっと最悪を考えると、犯罪者で逃げ回ってるのかもしれない。
そんな男かもしれない奴を、俺は到底受け入れられないよ」
良平が言うことは最もすぎて、海人はますます何も言えなかった。
僕は、突然、過去からやってきた人間だ。
これから先も僕の身に何が起こるか見当もつかない。
僕の中でここに留まりたいという気持ちが高まっているのは事実だが、僕の意思が反映されるかどうかも全く分からない。
海人は下を向いて、唇を噛みしめるしかなかった。