あの夏に僕がここへ来た理由
「働こうとは思わないのか?」
突然、良平が聞いてきた。
「働きたい、働きたいです。」
海人は切実にそう答えた。
「一つ、提案があるんだ。
とにかく、ここから出ていくこと。
そのかわり、働き口と住む所を紹介してやる。
昨日、ここから5キロほど離れた海沿いの町で、小さな民宿がアルバイト募集住み込み可って書いた紙を貼ってあるのを見かけたんだ。
なんとなくその名前が頭に残ってて、さっき電話してまだ募集してるか確認してみた」
「それで?」
「まだ、募集しているってさ。
若い男、大歓迎だって。
で、どうする?」