あの夏に僕がここへ来た理由
「うそ。
そんなの信じない。
だって・・・
だって、海人さんは、行くとこなんてないんだよ・・・」
そう言うとひまわりは、良平の手を振りほどき家の中に入った。
ガランとした居間には人のいる気配はない。
ひまわりはトイレにお風呂に全部の部屋を捜したが、やはり海人の姿はなかった。
「良ちゃん、海人さんに何を言ったの?」
ひまわりは、呆然としながら良平に聞いた。
「俺は、あいつが何を考えて、何をやりたいのか、聞いただけさ。
あいつが決めて出て行った。
それだけ」
良平は心を鬼にしてひまわりを見つめた。
これはひまわりのためでもあるが、あいつのためでもあるんだ。
こんな生活がいつまでも続くはずはない。
今は辛いけど・・・
許してくれ・・・