あの夏に僕がここへ来た理由
「それだけって・・・
海人さんは、本当に、どこにも行くところがないんだよ・・・
家族も、兄弟も、親戚もいないのにどこに行けばいいのよ・・・
ここにいて私に迷惑をかけてることも、彼はずっと気にしてた。
だから、働きたいとも言ってた。
でも、私がここにいてって頼んだの・・・
私達にどれだけの時間があるのかも全然分からないけど、でも、1分でも1秒でも一緒にいたいって思ったの・・・
良ちゃんの馬鹿・・・
海人さんをどこに連れて行ったのよ・・・」
ひまわりは堪えきれず子供のように膝を丸めて泣き崩れた。
「ひまだって夏休みが終わったら、東京に帰らなきゃならないんだぞ。
いつまでもこの暮らしができるわけがないんだから。
あいつも、それを考えたんだろ・・・」
その時、ひまわりはまだ海人が近いところにいるように感じた。
捜しに行けばまだ近くにいるかもしれない・・・
きっと、いる・・・
海人さんは私を置いては行かないもの・・・