あの夏に僕がここへ来た理由
「海人さん、やっと、見つけた・・・」
さくらは安堵の表情を浮かべながらも、海人から視線を外さなかった。
「海人さん、一つだけ、私に謝らせて・・・
お兄ちゃんの自分勝手な思い込みのせいで、ひまちゃんと海人さんを傷つけてしまったことを、兄に代わって私が謝りたいの。
本当にごめんなさい・・・」
さくらは、涙を浮かべていた。
海人はようやくまともに頭が働きだし、その言葉の意味をもう一度頭のなかで考えた。
「さくらさん、僕は良平さんのことを憎んでなんかいないよ。
良平さんが僕にしたことは、ひまわりさんのためであり僕のためでもあるんだって今では理解できる。
良平さんのおかげで僕はここで働いているし、僕自身の存在を認めてもらえる機会を与えてもらったって思ってるんだ。
だからさくらさんがそうやって謝ることじゃないし、僕は逆に感謝してるんだよ」