あの夏に僕がここへ来た理由
ひまわりはホッとしたせいか笑みがこぼれた。
すると、ひまわりの様子を見て安心した海人はまた質問を投げかけた。
「あの、ここは北関東ですか?」
地元に近ければ何か手がかりを探せるかもしれない。
「ここは九州の南の方です」
小さな声でひまわりはそう答えた。
九州・・・
地図でしか見たことのない遠い場所。
外は雨が上がり夕焼けが周りの景色をオレンジ色に染めていた。
外へ出ると涼しい夜の風が海人とひまわりを優しく包んでくれる。
久しぶりに味わう穏やかなひと時は、海人を戦争を知る前のあの平和な日々に導いてくれた。
気がつくと、海人は涙が溢れて止まらなかった。
ひまわりは胸が締め付けられる思いをしていた。
海人に事情を聞いたわけでもないのに切なくて苦しい。
ひまわりはいつもの癖で大きく手を伸ばし深呼吸した。
平常心を保つこと。
それは小さい時からのひまわりのおまじないだった。