あの夏に僕がここへ来た理由



「そうなんだ・・・
じゃ、もうすぐ切れるかもしれないから、何か伝えることはある?」


海人が焦ってそう言うと、ひまわりは黙ってしまった。



「ひまわり?」


海人が問いかけると、彼女は小さな声でこう言った。


「会いたい・・・」



「僕も、会いたいよ。でも」


そう言いかけると、非情にも電話は切れてしまった。

海人は慌ててかけ直そうと思ったが、手持ちのお金はあと数百円しかない。
海人は、目の前にあるバス停の時刻表を見た。
最終バスは5分後にやって来る。


ひまわりに会いたい・・・


その気持ちが海人をどんどん追いつめる。
右往左往している内に、バスが見えてきた。

海人は何も考えずにバスに乗り込んだ。
もう、ひまわりのことしか頭になかった。





< 160 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop