あの夏に僕がここへ来た理由
不穏



僕達は、未来を夢見ることに幸せを感じていた。

だけど、僕に、未来はあるのだろうか・・・

とてつもない不安の塊が、時々、僕を襲ってくる。




海人とひまわりは毎日の昼休みのデートを重ね、日に日に二人の生活も落ち着いてきた。
民宿は繁忙期を迎え、たまにひまわりも厨房の手伝いに入ることがあった。

サチに言わせると、ひまわりの料理の腕前はプロ並みだそうだ。
海人はひまわりが楽しそうに料理をしている姿を見ると、母を思い出した。


僕の母も、少ない材料を工夫してご馳走にしてくれるほどの料理好きだった。
戦時中の貧しい生活の中で料理をする時の母の笑顔は、僕達兄妹の心の支えだった。


大体の客が夕飯を済ませ部屋へ戻ったところを見計らって、サチと海人は遅い夕食をとった。








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