あの夏に僕がここへ来た理由



今日は花火大会の当日だというのに、海人は朝からひどい頭痛に悩まされていた。

日に日に痛みが増しているこの頭痛は、病気でも疲れでもないことを海人に訴えていた。
海人はそんな不安や焦りを、サチからもらった鎮痛剤で痛みと一緒に胃の中に流し込んでしまいたかった。


やつれた顔で朝の仕事をこなしていると、珍しく、サチが海人に話しかけてきた。


「今日は、楽しんでおいで。

私の孫が着ていた浴衣があるから、それを着ていけばいいよ」



「いえ、いえ、大丈夫です。

というか、この恰好じゃダメですか?」


海人は自分の服装を眺めながら聞いてみた。


「ひまわりちゃんは、浴衣を着るって言ってたよ。

いいから、浴衣を着てお行き。
孫と背格好は一緒くらいだから、遠慮しなくていいんだよ」


海人は「はい」と頷いて、サチに無理に笑って見せた。






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