あの夏に僕がここへ来た理由



ひまわりはその日の帰り、家の近くの公園からサチに電話をした。

サチは、まるで、ひまわりから今日この電話がくるのが分かっていたかのように、落ち着いて話を聞いてくれた。

ほんの数日前まで海人と一緒に過ごし、ひまわりの頭も体も海人の温もりを覚えている。
お墓まで行って海人の死を目の当たりにしたはずなのに、ひまわり自身が全ての真実を拒否していた。


海人の幻でもいい・・・

会いたい・・・


ひまわりはその正直な思いをサチに話した。


「サチさん、
海人さんは、私に言ってくれたんです・・・

また、必ず、ひまわりに会いにくるって・・・

絶対、君を捜し出すって・・・」



「ひまわりちゃん、
海人君は、もう、ひまわりちゃんを捜して、ここまで来てくれたじゃないか・・・

この信じられないような本当の話は、二度はないと私は思うんだよ・・・

奇跡は、たったの一度きり・・・」


サチの電話から聞こえる声は震えていた。




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