あの夏に僕がここへ来た理由


「ひまわり」


遠くから、ひまわりを呼ぶ男の人の声がした。

振り返ると、5年ぶりに見る父の顔があった。
ひまわりは、驚きのあまり、そこに立ち尽くした。
少し年は取ったが、ひまわりを見つめる優しい眼差しは変わっていない。


「パパ、どうしたの?」



「今日は、ひまの誕生日だろ?
それも20歳になったんだ。

パパにも、お祝いさせてくれよ」



「ママは?」


ひまわりはそう言って、周りを捜してみた。


「ママは・・・

ママから、パパに連絡があったんだ。

ひまが、この間の夏の終わりから元気がないって・・・
パパに会えば、元気になるかもしれないからって・・・」



「パパ・・・」


ひまわりは、小さな子供に戻ってしまった。
父を見たら心の奥底に隠しておいた悲しみが、とめどなく溢れ出てくる。


「今日は、パパとデートしよう。
小さい頃、よく、やってたように・・・ね?」



「うん・・・」


ひまわりは、涙顔で父に抱きついた。





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