あの夏に僕がここへ来た理由
そして、ひまわりは、倉庫にしまっているベンチを久しぶりに外に出した。
このベンチは海人がこの家の庭の整理をしている時に、私のために作ってくれたものだった。
海人の話では、もう少しお洒落にするつもりだったらしい。
しかし、廃材を利用して作ったために、これが限界だったと言っていた。
このベンチを見ると、あの頃がよみがえってくる。
海人はこのベンチを作り終えると同時に、良平とあの民宿に行くことになったのだ。
この小さな二人掛けのベンチは、海人がここで過ごした証しだった。
ひまわりは、それを梱包する前にきれいに洗うことにした。
ベンチの表面をスポンジで丁寧に磨き、裏返しにした時に、そこに古びた手紙が貼りついていることに気がついた。
心臓が止まりそうだった。
海人からの手紙だ・・・
ひまわりは、震える手で、四つ折りに畳んだ一枚の手紙を開けてみた。