あの夏に僕がここへ来た理由




「ひまわり、ちょっと大切な話があるんだ」


海(わたる)が、真剣な顔でひまわりに向かってそう言った。

ひまわりは洗い物の手を止めて、食卓に座っている海(わたる)の前に座った。


「シンガポールの本社への辞令が出た。秋には向こうへ行かなきゃならない・・・

ひまわりはどうしたい?」


海(わたる)は、いつも優しかった。
今までも、ひまわりに無理強いをすることは一度もなかった。


「ひまわりのお母さんのこととかを考えたら、シンガポールは遠いよな・・・
僕は、単身でも構わないとも思ってるんだ」


海(わたる)は、ソファでうたた寝をしている海人を見つめながら寂しそうに言った。


「そんなの答えは決まってるじゃない。
家族でシンガポールへ行こう。

向こうには、あなたのお父さんもいるし、海人を連れて行ったらとても喜んでくれるはず。
私も、シンガポール、好きよ。
あなたが、育った町だもの・・・」


海(わたる)は、ホッとした顔をした。


「ありがとう、ひまわり。

凄く、嬉しいよ」


そう言って、大げさにひまわりを抱き寄せた。


私は、海(わたる)を本当に愛している。
海(わたる)なしでは生きていけないとさえ思うほど・・・






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