あの夏に僕がここへ来た理由



「一つだけ、お願いがあるの・・・」


ひまわりは、ずっと考えていたことを思い切って海(わたる)へ話すことに決めた。


「九月の引っ越しまでに、行きたいところがあって・・・」


ひまわりは、海(わたる)が反対することはないと分かっていたが、ちゃんと話しておきたかった。


「どこへ?」


海(わたる)が、聞いてきた。


「そんなに遠くない。
埼玉なの。群馬との県境なんだけど・・・」



「何の用事で?」


海(わたる)の顔には不安な表情が表れている。


「実は、お墓参りに行きたいの。

戦争で亡くなった方なんだけど、私にとっては大切な人で・・・」



「おじいさんの知り合いかなにか?」


心配と不安が入り混じった顔で海(わたる)は聞いてきた。


「あ、うん・・・
そうなの・・・」


ひまわりは嘘をつくしなかった。


いつの日にか真実を話せる日がくるまでは、まだ打ち明けるのはやめておこう・・・





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