あの夏に僕がここへ来た理由



結局、海人はひまわりの家で夕食をご馳走してもらうことになった。


ひまわりは海人が不安にならないように、家までの道中一人で喋り続けた。

海人は公園の階段を下りて森の中の小道を抜け大きな道路に入ったとたん、呆然と立ち尽くしてしまった。


国道に沿って立ち並ぶビルディング。
明るく点滅する信号機に、鈴なりになって走る自動車。

ひまわりにとって見慣れた風景は、海人をただただ驚愕させた。
しばらく考え込んだ海人は徐々に落ち着きを取り戻しひまわりより先を歩き始めた。


記憶をなくした人の心情は私にはうかがい知ることはできない・・・



「こんなに素晴らしい世界になっているんですね・・・」



海人は小さな声でつぶやいた。


何の因果があってこんな未来に来てしまったのか?
起こり得ない現実に海人は身をすくめていた。


夢ならもう覚めてくれ・・・
この素敵なひまわりに心を持っていかれる前に・・・













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