あの夏に僕がここへ来た理由
ひまわりは家に帰る前にコンビニに寄った。
海人は店には入らず外で待っていた。
ひまわりは男もののTシャツと下着を買いリュックにしまってから外へ出た。
すると、海人は少年のような表情でコンビニの中を興味津々に覗いている。
ひまわりは優しく海人を呼んだ。
「中に入ってみる?」
ひまわりの問いかけに海人は恥ずかしそうに首を横に振った。
「僕は汚過ぎです。
あんなに明るい店の中ではきっと目立ってしまう」
ひまわりはうんともすんとも言わず柔らかい笑みを浮かべてまた家へ向かって歩き出した。
家に着くと、海人は本当に家族はいないのかとひまわりに聞いた。
ひまわりは玄関の鍵を開け真っ暗な家の中を海人に見せた。
「本当に一人なんですよ。
祖父母はもう他界しています。
この家は私と母で大切に守ってるんです。あ、母は今回はいないですけど」
そう言いながら玄関と廊下の電気をつけまだ玄関先で戸惑っている海人に
「どうぞ」
と入るように促した。
海人は玄関先で何かを思い定めたように背筋を伸ばしてから大きな声で言った。
「お邪魔します」