あの夏に僕がここへ来た理由



海人はそうは言ったもののまだ家に入る事をためらっていた。


彼女が抱いている僕への見解は、記憶をなくし名前以外は思い出せない記憶喪失者というところらしい。
普通の人間ならば過去からやってきたなんて想像することさえ皆無だろう。


海人はひまわりの考えに合わせることに決めた。

僕がこの先この時代で暮らしていくのならそれが最善の策なのかもしれない。


ひまわりの家は整然と片付いていた。

海人は汚れた靴を脱ぎ自分の足を見た途端に入るのをためらってしまった。
想像していた以上に汚れている。

海人はさっき公園できれいに洗った手ぬぐいでひまわりが見ていない隙に足の裏を拭き、靴の中に靴下と手ぬぐいを詰め込んでそれを玄関の隅にひっそりと置いた。









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