あの夏に僕がここへ来た理由
海人は階段を下り白い砂浜に足をついた時、目の前に広がる光景に思わず息を飲んでしまった。
平和な世界に広がるこの海は、小さな頃に憧れていたあの海に似ていた。
戦地で毎日眺めていたあの灰色の暗い海ではない。
もう死の淵で苦しまなくてもいい・・・
醜くてむごい戦いから解放されたのか?
目の前に広がる海は、まるで僕の未来を暗示しているかのような明るい真っ青な海だった。
海人は裸足になってひまわりを追いかけた。
ひまわりは砂浜に腰を下ろして波を見ている。
波打ち際まできた海人はひまわりを呼んだ。
「気持ちいい~~
最高ですよ~」
海人はひまわりの方へ手を伸ばした。
ひまわりはズボンに付いた砂を払いそろりそろりと海へ入ってきた。
差し伸べている海人の手をとるとうつむいて気恥ずかしそうに笑った。
そして、僕達は手を繋いだまま寄せては返す波をずっと見ていた。