あの夏に僕がここへ来た理由




日差しが強くなってきたため二人は岩場にある日陰で休んだ。

ひまわりは麦茶の入った水筒を海人に差し出した。


「ひまわりさんは?」



「私はそんなに喉は渇いてないから、お先にどうぞ」


ひまわりがそう言うと、海人は一瞬ためらった後に軽く会釈をして喉の渇きを癒した。
そして、下をうつむき小さくため息をついた。


「僕はひまわりさんに何もしてあげられない。

昨日からひまわりさんが僕にしてくれたことを考えると、何十回お礼を言っても足りないくらい。

僕はあの公園でひまわりさんと会えてすごく幸運だったと思えるけど、ひまわりさんはあの状況で僕のことを置いて行けなかったんだと思うんだ。
それなのにこんなに親切にしてくれる。

僕は自分自身が歯がゆくてしょうがないよ」



海人は水筒を強く握りしめてそう言った。










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