あの夏に僕がここへ来た理由




公園までの道のりはまだ覚えていた。

ポツポツと雨が落ちてきているのも気づかずに、海人はただひたすら走った。
階段が見えてきた頃にはかなりずぶぬれになっていた。
それでも空を覆う真っ黒い雨雲は先へ先へと海人を焦らせた。

やっとベンチへ辿り着き腰を下ろしたと同時に、空が光った。
海人は心の中で何度もつぶやいた。


「母さんと妹達の元へ帰してください」


海人はしばらくそこに座っていた。
空は明るさを取り戻し雨は小雨に変わっている。

海人はやりきれない思いに体が震えている。



僕は未来へ来てしまった。
それは幸せなことなのかもしれない。
親切で可愛らしいひまわりさんがいつも側にいてくれる。
それに僕は戦争も飢餓もないこんな未来をずっと夢に見ていた。



だけど、でも、僕は家族の元へ帰らなければならない・・・

飢えを耐えて僕の帰りを待っている家族の元へ。











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