あの夏に僕がここへ来た理由
「日本は負けたんだ・・・
それも1年後に・・・」
海人はあまりの衝撃に呆然とした。
戦争で見た無残な光景が、走馬灯のように頭を駆け巡った。
僕はあの戦争でたくさんのものを失った。
70年後の今を生きている人々は、あの戦争をもう忘れているのだろうか。
海人は、この時代で、生きていく自信をなくしてしまいそうだった。
僕の家族は、故郷は、どうなったのだろう・・・
その質問だけは怖くてどうしても口に出来なかった。
今、僕がこうして生活しているこの時代が本物だとすれば、この間まで必死に戦って生きてきた僕や僕の仲間達の苦しみや絶望は無意味ではなかったんだ。
でも・・・
なんで僕達が・・・
海人は、それ以来、戦争のことは心の奥底に封印した。