あの夏に僕がここへ来た理由
「ひまわり、大丈夫?
元気にしてる?」
ひまわりの母の好子は、矢継ぎ早に言った。
「うん、元気だよ・・・」
「さっき、あきちゃんから電話があって、そこの家に男の人がいるらしいって言うのよ」
ひまわりは顔をしかめた。
あきちゃんというのは、隣町に住む母の従姉であり、唯一、私達母娘が仲良くしている親戚である。
「あ~、ママ、これには事情があって、確かに男の人はいるんだけど全然大丈夫なの・・・
全く心配いらないの。
話せば長くなるんだけど・・・」
ひまわりが言い終わらない内に、好子は口を挟んできた。
「さくらをそこに行かせるって、あきちゃんが言ってたから。
ママは今、仕事中でゆっくり話せないの。
とりあえずさくらに見に行ってもらうからね。
どんな人でも男の人を家に入れるって、誰だって心配するでしょ。
また夜にでも電話するから」
そう言うと、好子は電話を切った。