あの夏に僕がここへ来た理由



ひまわりが慌てて玄関へ行くと、さくらはスニーカーを脱いで上がろうとしていた。


「さくら、久しぶり。

あきちゃんに聞いたと思うけど、確かにここには男の人がいるんだ・・・」


ひまわりはさくらをグイッと引き寄せて、小さな声で言った。


「まじなんだ。その話。

その人ってひまちゃんの彼氏なの?」


さくらは、早く奥へ行きたくてうずうずしている。


「うん、そう、彼氏なの。

でもこれだけはちゃんと聞いて。
彼は今、一過性の記憶喪失になっちゃってたいへんなの。
だから、あまり長居はしないでね。

わかった?」


ひまわりは、とっさに、海人が記憶喪失で彼氏の方がもっと二人にとって都合がいいと思った。


さくらは大きく頷くと、そわそわしながら居間へ向かって歩き出した。








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