あの夏に僕がここへ来た理由
「ひまちゃんに彼がいたなんて信じられないよ。
だって、いつも大人しくてさ、男の人になんか興味がないんだって思ってた。
お兄ちゃんが聞いたら、ショック受けちゃうぞ。
だってひまちゃんのこと大好きなんだから」
さくらには、3つ上の兄がいる。
ひまわりにとっても、兄同様の存在だった。
でも、今は関西にある大学に通っているためここにはいなかった。
さくらは居間に入るとソファに座り、辺りを見回している。
ひまわりは意を決して彼を呼んだ。
海人は、庭の隅の方で草むしりをしていた。
「海人さん、ちょっといい?」
海人は庭にある水道で手と顔を洗い、縁側に腰かけた。
そして、濡れた顔をタオルで拭いながら、そこにいるひまわりとさくらを交互に見た。