あの夏に僕がここへ来た理由
「今日は、僕が夕飯を作ろうかなと思って。
料理は得意じゃないけど、野菜炒めくらいは作れると思うし・・・
ひまわりさんは、ゆっくりと休んでて」
海人はそう言うと、ひまわりに軽く目配せをして微笑んだ。
ひまわりはこのあふれそうな思いを、海人に伝えたいと思った。
でも伝えてどうなるの?
いつかはここから出ていく人なのに・・・
そう思っただけでまた涙がこみ上げた。
「海人さん、今日は心配をかけて本当にごめんなさい。
私、たぶん、海人さんのことを一人占めしたかっただけなの・・・
あの日から、海人さんと出会った日から、ずっと二人だったし、二人でいるのがすごく楽しくて・・・」
海人は黙って聞いている。
「そして今日、急にさくらが来て、なんだかとても悲しくなって・・・
さくらは何も悪くないのに・・・
私、どうかしてるよね・・・
本当、馬鹿みたい・・・」