あの夏に僕がここへ来た理由



「今日は、僕が夕飯を作ろうかなと思って。
料理は得意じゃないけど、野菜炒めくらいは作れると思うし・・・

ひまわりさんは、ゆっくりと休んでて」


海人はそう言うと、ひまわりに軽く目配せをして微笑んだ。


ひまわりはこのあふれそうな思いを、海人に伝えたいと思った。


でも伝えてどうなるの?
いつかはここから出ていく人なのに・・・


そう思っただけでまた涙がこみ上げた。


「海人さん、今日は心配をかけて本当にごめんなさい。
私、たぶん、海人さんのことを一人占めしたかっただけなの・・・

あの日から、海人さんと出会った日から、ずっと二人だったし、二人でいるのがすごく楽しくて・・・」


海人は黙って聞いている。


「そして今日、急にさくらが来て、なんだかとても悲しくなって・・・
 
さくらは何も悪くないのに・・・
私、どうかしてるよね・・・ 

本当、馬鹿みたい・・・」






< 74 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop