あの夏に僕がここへ来た理由
「私は記憶喪失がどういうものか全く分からないから、これからも海人さんに失礼なこと聞いちゃうかもしれない・・・」
さくらは、海人に気を遣ってくれていた。
「全然、大丈夫ですよ。
分かる範囲でしか僕も答えられないけど・・・」
さくらは少し笑みを浮かべた。
「ひまちゃんが、海人さんを好きになるのが分かる気がする」
さくらは続けた。
「一緒に居たらなんだか安心するし、そういう包容力を感じる。
ひまちゃんは、両親が離婚してからますます笑わなくなっちゃったんだよね。
もともと大人しい子だったのが、さらにひどくなっちゃって・・・
ひまちゃんはお父さんっ子だったから、本当はすごく傷ついてたんだと思う。
それ以来、お父さんのことは全然話さなくなっちゃたし・・・」
海人はこの話を初めて聞いた。
「ひまわりさんからお父さんの話はたまに聞いたりしてたけど、離婚したっていうのは知らなかった。」
さくらは、慌てて僕に言った。