零の夜
コン コン


「ユアです。入っても宜しいですか?」


「どうぞ。入りなさい。」


1月。
外では、雪がちらちらと降っている頃。
オルソドアール家は、4人目の子供を授かろうとしていた。
オルソドアール家の主、グラディウスの妻リリーは、その子の誕生を、今か今かと待ち遠しく思っていた。

「リリー様。お身体に変わりは有りませんか?」


先程、リリーの部屋に入ってきたメイド、ユアはまだ幼く15歳だ。

道端で倒れていた所をオルソドアール家の者に助けられ、その時のご恩を返そう、と仕える身になったのだ。


「大丈夫よ。私も、そしてこの子も」
そう言って、リリーは自分のお腹にそっと手をあてた。

「それにしても、ご覧。
庭が雪で真っ白になってるわ。・・・・綺麗ねぇ」



リリーの部屋の窓から見える景色は、一面銀世界と言っても過言では無い程だった。


「わぁ。凄いですねリリー様。こんなに降ったのは、何年ぶりでしょうか?」

頬をほんのりと赤色に染め、ユアは少し興奮気味に話した。


「ふふっ。そうね、5〜6年ぶり位かしら。
・・・・ねぇ、ユア。
この子、男の子かしら?それとも、女の子?」

< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop