零の夜
「誰か早く助産婦を呼べ!!」

「グラディウス様は何処へ?」
「それが、お姿を誰も見ていないとッ・・・・」


事態が急変したのは、子供の名前を考えていたその晩。

ユアが「カモミールティーをお持ち致しますね」と、リリーの部屋を後にした直後だった。








「うッ・・・・・・」

リリーは腹に、鋭利な物で貫かれる様な痛みを感じた。
今まで、3人の子供を産んだが、そのどの時にも当てはまらぬ、恐れすら感じる、激しい痛みだった。



「あ゛ァァァァァッ!!」
余りの痛さに耐えきれず、リリーは獣の様な叫び声をあげた。


「リリー様ッ!失礼します。どうされま・・・・・・・キ、キャァァァァァッ! リリー様、大丈夫ですか?誰か!誰か医者を!」






静かだった屋敷内は、一気に騒々しくなった。



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