遅咲きの恋
遅咲きの恋
「あーあ……とうとう亜樹(あき)も結婚かー」


目の前で頬杖を付く可愛い顔つきの男、翔(しょう)の口からこの言葉が出るのはもう何度目だろうか。
おめでたい話題のはずなのに、この場にいる皆は聞き飽きた様に適当にあしらっていた。


「翔太……お前いい加減にしつこいぞ」


皆の想いを代表するかのように翔を睨むのは雅人(まさと)だ。
高校の時から変わらない金髪は年甲斐もなく似合っている。


「だってーなんか寂しいじゃん!」


雅人の睨みをものともせずプクッと頬を膨らませる翔。
そんな翔を見て纏め役である亮祐(りょうすけ)がハァッとタメ息を吐いた。


「確かに寂しいけどメデタイ事だろう?」


小さい子供に言い聞かせる様に亮祐は優しく言葉を放つ。
爽やかな笑顔を見ると流石の翔も『うっ……』と黙り込んでしまった。


「そうそう、それに結婚することくらい分かってただろうが」

「そうだけどー……」


雅人と翔の言い合いに苦笑いを浮かべながら私は隣を向く。
そこには吊り目でいかにもクールそうな男が座っている。


「稜也(りょうや)どうしたの?
何も喋ってないけど……」


無口なのはいつもの事だけど、今日はどことなく素っ気ない気がした。
心配になり彼を見つめていれば、ゆっくりと視線が交じり合う。


「……何でもない」

「何でもないって顔じゃないけど……」

「……」


私の言葉を無視する様に稜也は目の前にあったビールを一気に飲み干した。
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