遅咲きの恋
「乾杯!」

「……乾杯」


缶と缶をぶつけ、今日2度目の乾杯をする。

こうやって2人でお酒を飲むのも珍しくない。
仕事帰りとか暇な時とか。

今考えると本当に一緒にいる時間が多いと思う。


「んー美味しいー……」

「おい、飲み過ぎると二日酔いになるぞ」

「えー……飲むのー……」


明日は結婚式で、大切な日なのに。
他の男の人と過ごすなんて。
世間からしたら後ろ指を指されるんだろうなー。
そう思いながらも飲む事はやめない。
だって、彼の哀しそうな顔を見て、放って置ける訳がないから。


「……好きにしろ」


稜也は優しいから。
いつも私の意思を尊重してくれる。

だけど。
彼にも我儘を言って欲しいと思うのは私の我儘だろうか?

ゴクリとビールを飲みながら。
稜也を盗み見る。

高校生の時より、大人びた顔立ち。

だけど、何ひとつ変わらない私たちの距離。

いつだって。

稜也は私の味方でいてくれた。
私を傍で守ってくれた。

私だって、稜也の力になりたいの。
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