遅咲きの恋
「ねえ稜也」

「……ん?」


私が真剣なトーンで喋り出したからか。
稜也はビールの缶をテーブルに置いて私を見つめた。

少し吊り上った目が、真っ直ぐに私を捕らえて離さない。
心なしか、その視線は熱を帯びている様な気がしたんだ。

でも、気にする事なく、彼の目を見つめる。
その数秒後、視線をずらして呟いた。


「なんか……いつもと違う気がしてさ。
……無理してるんじゃないかって心配で……」


ビールに口を付けながら言えば、沈黙が私たちの間に流れる。

静かな空間は、いつも私たちが過ごす稜也の部屋とは全く違って見えた。

変に緊張をする。


「……」


こんな事は初めてで、逃げる様にビールを喉に流した。

喉を鳴らす小さな音だけが部屋へと響き渡っていた。
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