遅咲きの恋
「……何でもない」


ポツリと呟いて、稜也は立ち上がった。

ずっと繋がれていた手が、ゆっくりと離れていく。

それだけなのに。
何故か無性に胸騒ぎがしたんだ。

私たちの仲が引き裂かれる様な。
そんな不思議な感覚に陥った。


「何でもない訳ないでしょ?」

「……何でもないから、気にするな」

「っ……!!」


私に背を向けて、寝室に向かう稜也。

それが拒絶をされた様に感じて胸が締め付けられた。

居ても立っても居られなくて。
立ち上がったと同時に走り出す。
稜也の背中に抱き着く様にして、彼の歩みを無理やり止めさせた。

こうでもしないと。
稜也が消えてしまう。
そう思えて仕方がないんだ。
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