遅咲きの恋
ドクンと高鳴る胸。

長い時間を一緒に過ごして。
彼を男の人として意識したのは初めてだったかもしれない。

私より遥かに高い身長も。
大きな手のひらも。
抱き寄せる強い力も。

私とは全然違って。
何ひとつ敵わない。

それなのに。

今の貴方は凄く弱々しくて。
壊れてしまう様な。
儚さが漂っている。


「……」


稜也の手を握りしめるけれど。
貴方との距離は縮まらない。

稜也の心の中には。
どう足掻いたって入れなくて。

それが無性に哀しかった。


「っ……」


小さな悲鳴。
それと共に頬には熱い何かが流れていく。


「亜樹……?」


返事を返す事も出来なくて。
声が出るのを必死に押し殺した。
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