遅咲きの恋
「亜樹は俺にとっての光だった。
誰も信じられなかった俺をずっと支えてくれた。
酷い扱いをしていたのに、それでも一緒にいようとしてくれた……」


彼から出る言葉は。
ずっと溜め込んでいた想いだった。


「多分、自分でも気付かないうちにお前に惚れてた。
優輝が転校をしてくるもっと前から……。
でも、アイツが来てから、俺たちの距離は近くなったけれど。
お前と優輝の距離の方が近くなって……。
気が付いたら、俺の入る隙間なんて何処にもなかった」


力なく笑った稜也の目からはポタリと涙が零れた。

それは私の頬へと落ちていく。

彼の想いが、彼の苦しみが。
全て詰まったその涙は。
凄く重たく感じたんだ。

ズキリと痛む胸を我慢しながら。
必死に貴方を見つめる。

今、一生懸命に想いをぶつけてくれている。

それをひとつも零したくないんだ。

奥歯を噛みしめて、ただ貴方を見つめた。
哀しそうなその瞳は真っ直ぐに私を捕らえる。


「俺にとって優輝は親友だ。
アイツも俺を救ってくれた。
……だけど……」


言葉を詰まらせても。
その瞳は私から逸れる事はなかった。

堪える様に、歯を食いしばって。
次の言葉を必死に繋いでいく。


「亜樹だけは諦めたくない」


どんな言葉よりも。
貴方のその言葉が私の胸を弾ませるんだ。
< 20 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop