遅咲きの恋
「っ……!?」


それを切り裂く様に軽快な音楽が静かな部屋へと鳴り響いた。

私のスマホの着信だ。
聞き慣れた曲、優輝からの電話だ。

それが分かったのは私だけではない。
ピクリと肩を揺らす稜也。
その口からは私の結婚相手の名前が出てくる。


「優輝……」


眉を下げて、歯を食いしばる貴方は。
何かを堪える様に見えた。

だけどすぐに。
それを振り払うかのように私を見つめた。


「出るな」

「で、でも……」

「亜樹、俺を見ろ」


音楽が鳴り続ける中で。
私たちはもう1度キスをした。

スマホの向こうでは。
優輝が私を待っているのに。

それでも。
電話に出る事が出来なかった。
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