遅咲きの恋
「本当は言わないでおこうと思った」

「え……」

「俺の気持ち。
高校の時もそうだった。
お前が好きで、何度も口に出そうとした。
……だけど……」


揺れた瞳がゆっくりと細まっていく。

力ない、でも、柔らかい笑顔。

それを見た瞬間、胸が悲鳴を上げた。


「お前が幸せならそれで良かったから」


今ハッキリと分かったんだ。

貴方がどれだけ傷ついてきたのか。
貴方がどれだけ耐えてきたのかが。


「俺の隣にいなくたって。
お前の笑顔が見えればそれでいいって。
……親友だろうが、近くにいたかったんだ」


何も言えなかった。

言葉なんて出せる訳がない。

だって、その苦しみは私が理解出来るものではない。

何より、稜也を苦しめ続けてきたのは。
他の誰でもない私だったのだから。

今まで、沢山、傷ついてきた稜也。

2度と傷つけないと、私が守ると誓ったのに。

私が貴方を傷付けた。
それが許せなかった。
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