遅咲きの恋
気付いても、それを口にする事は出来なかった。

だって明日は結婚式で。

はい、中止です、なんて事は出来る訳ない。

それに……。


「優輝と……約束したから……。
ずっと一緒にいるって……だから……」


涙が溢れてくる理由なんて分からない。

私は優輝が大好きだった。

ずっと傍にいたいと思ったのも。
いつか結婚をしたいと思ったのも事実だ。

だけど、いつからだろう。

私は優輝を愛しているという気持ちより。
一緒にいなきゃ、という気持ちの方が膨らんでいたのかもしれない。


「だからって……結婚する理由にはならない……。
そんな気持ちで結婚したって……上手くいく訳ないだろう」


貴方の言葉は的確過ぎて。
言い返す事も出来ないんだ。


「私……何でっ……」

「悪い……こんな事……言うべきじゃなかったのかもしれない。
だけど、結婚してからじゃ、もう遅いって思ったから」


強く抱きしめられる。
何も考えられなくなるほど。
彼なりの優しさなんだ。
私が過ちを犯す前に貴方は必死に教えてくれようとしている。
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