遅咲きの恋
時刻は11時。

そろそろ式が始まる時間帯だ。

そう思いながら私は緊張を胸に抱えていた。

ぎゅっと拳を握りしめて俯いていた顔を上げる。

もう、決めたんだ。

後悔なんてしない。

そう思っていれば、バタンと激しい音が響き渡った。

何事かと思い呆然と立ち尽くしていれば、稜也がいきなり飛び出して来た。
凄いスピードで。


「な、なんで……」


驚いた顔をするのは稜也の方だった。

そんな貴方を見ながらクスリと笑った。


「おはよう」

「おはよう……じゃないだろ……。
……何でココに……式は……」


戸惑う貴方に背を向けてキッチンへと向かった。

ココは稜也の家で。

私は呑気に料理をしていた。

スーパーで材料を調達して、使った形跡が見当たらない鍋やフライパンを勝手に借りて。


「あー……今頃、大騒ぎかな……」


苦笑いを浮かべながら料理を続ける。

花嫁が式をボイコットするなんて。
考えられないし、あってはいけない事だ。

でも、私はココにいる。
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