遅咲きの恋
「亜樹の騎士は優輝じゃん!」

「ああ、アイツ以外にはいねぇだろ?」


翔と雅人の言葉を聞いた亮祐は大袈裟に肩を下げた。
そして、チラリとある場所を見ると哀しそうに眉を下げた。


「お前らって本当に鈍感だな」


憐みの籠った声。
いつもとは違う亮祐の声に、思わず目を丸めてしまう。
亮祐の視線を辿ればそこには稜也がいて。
彼もまた哀しそうな顔をしていた。
とは言え、稜也の表情を見抜けるのは私と亮祐くらいだけど。
いつも無表情の稜也。
だけど今日は、少し様子がおかしいんだ。


「鈍感ってなんだよ!」

「雅人は言えてるかもだけど、僕は違うし!」

「何だと!?」


雅人と翔の言い争いが遠くの方で聞こえる。
それくらい、私はボーっとしていた。


「……何だ?」


私の視線に気が付いたのか稜也は顔をこっちへと向けた。
でも、その顔はやっぱり哀しそうだ。


「……何でもない……」


稜也のそんな顔を見ていたくなくて。
視線を逸らしてお酒へと走った。
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