遅咲きの恋
「亜樹……?」


翔の心配そうな顔を見たら、つい要らない事を口走ってしまった。


「本当は不安なの。
お互い忙しいし、私の場合は常に死と隣り合わせで。
こんな状態で結婚して上手くいくのかなって……」


刑事という仕事は本当に危険だ。
それは私が身を持って学んできた事。
犯人と揉みあう事だってしょっちゅうだし。
いつ死んでもおかしくない。
休みの日だって確定している訳ではないし、非番の日に呼び出される事だって珍しくもない。

そんなすれ違いの日々を。
私たちは乗り越えていけるのだろうか。


「亜樹……」


亮祐の声で我に返った様に私は首を横に振った。


「なーんてね!酔ってるのかも私!
明日の晴れ舞台の為にソロソロ帰らなきゃね~」


無理やり引き上げた口角。
作り笑顔なんて、皆にはバレバレかもしれない。
それでも笑ってなきゃ私が耐えられないんだ。

これがマリッジブルーなのか。
そう呑気に考えていれば急にパシリと手を掴まれた。
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