遅咲きの恋
「っ……疲れたっ……」


ゼェゼェと肩で息をする。
稜也と一緒に来たのは彼の家だった。

何が何だか分からず、家の中に入れられた私。

勝手知ったる家だから、遠慮なくソファーに座り込む。
そんな私を気にも留めず、稜也は隣へと座った。


「……」

「……」


お互い喋らなくて。
沈黙だけが流れていた。

こうやって2人でいても。
居心地が悪くならないのは稜也だからだと断言が出来る。

長く同じ時間を過ごして。
職場も一緒で。

彼といる時間は優輝よりも圧倒的に長くて。
言葉がなくてもある程度の気持ちが分かって。

職場でも、最強コンビと言われるほどだ。


でも、今は分からない。
稜也が何を想っているかが全く分からないんだ。


「あのさ……」

「……ああ」

「……何でもない」

「……そうか」


“どうして連れ去ったの?”


その言葉が言えなかったのは。
稜也が辛そうに見えたからだ。
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