初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
初恋の思い出
『柊ちゃん、転校なんて、しちゃやだよ……』

満開の桜の木の下で、私は何度も何度もそう言って泣きじゃくった。そんなこと言ったって困らせてしまうだけなのに、まだ子どもだった私は、自分の感情をぶつけることしかできなかった。


『俺だってやだよ』

困った顔でそう答えた柊ちゃんの右手を、私はぎゅっと握った。そして。


『私、柊ちゃんが好きっ……』


当時七歳だった私の、精いっぱいの告白。
柊ちゃんは、それにはなにも答えなかった。


だけど、家に帰ってから告白の答えを知ることができた。
ううん、答えじゃない。それは、私が柊ちゃんに告白する前にすでにもらっていた、柊ちゃんからの手紙。転校前に柊ちゃんがクラスのみんなに書いてくれた手紙。そこには。



『なずなのことがすきだったよ』


うれしかった。でも同時に、すごく悲しかった。
明日から、教室に柊ちゃんはもういない。

もう、柊ちゃんに会えないんだ。


そう思ったら、涙が止まらなかった。



それが私の、小学校一年生の時の、初恋の思い出――……。
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