初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
だけど。


「そうなの? なずな」

明里ちゃんにそう聞かれ、


「う、うん、ごめん」

そう答えてしまったのは、なぜだろう。今まで明里ちゃんにウソついたことなんてないのに。



それなら仕方ないね、と明里ちゃんはタクヤくんやほかの人たちといっしょにカラオケへ向かった。カラオケに行かずに帰宅する人たちの姿も、駅に向かって見えなくなった。

なんとなく、立ち尽くしていた私と柊ちゃんだったけど、柊ちゃんがようやく口を開いてくれた。


「……ごめん。カラオケ行きたかったよな?」

「え、あ、その。行こうと思えばいつでも行けると思うし、大丈夫だよ。でも、なんで……?」

「……ちょっと、ふたりになりたかった。あのさ、ふたりで少し、飲み直さない?」

そう言われ、私の胸は今日一番鼓動が激しくなる。
期待が、大きくなってしまう。


私はもちろん、首を縦に振った。



「で、でもどこのお店に行こうか?」

なるべく明るい声で、なんてことないようなフリをして、私は柊ちゃんにそう尋ねる。


すると柊ちゃんは。



「じゃあ、俺の家」

「わかった。俺のい……家⁉︎」

「じゃ、行こ。途中でコンビニ寄って缶ビールか缶チューハイ買ってこ」

柊ちゃんはスタスタと歩き始める。
柊ちゃんって昔からこんなに強引だったっけ⁉︎


……でも、この強引さが、なんだかうれしい。
だって、私と話したいって思ってくれてるってことだよね……? 家に招いてくれるってことは、少しは好意を持ってくれてるってこと……?
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