初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
いろんな感情を抱きながら、私は柊ちゃんのうしろ姿を追いかけた。




柊ちゃんの家は、さっきまでいた居酒屋のある駅から四駅となりだった。駅近くの新しめのアパートが柊ちゃんの今住んでる家だった。


「狭いとこだけど、上がって」

そう言われ、私はゆっくりと玄関に足を踏み入れる。
狭い、と言われたけど、部屋はそれなりに広くて、ひとり暮らしなら充分すぎる広さだと思った。
部屋の中は、キレイに片付けられていた。ほこりもなくて、こまめに掃除機がかけられているのがよくわかった。柊ちゃん、男の人にしてはマメなキレイ好きなのかも。


ここに来るまでに買ってきた缶ビールを一本ずつテーブルに置き、柊ちゃんは座った。私も、テーブルを挟んで柊ちゃんの正面に座った。


「ほんとごめんな、無理やり家まで連れこんで」

ビールに口をつけながら柊ちゃんはあらためて私にそう謝る。


「う、ううん、いいの。私も、柊ちゃんともう少し話したかったから……」

と、内気な私が素直に自分の気持ちを伝えられたのは、たぶん……柊ちゃんも同じ気持ちだって、伝わってくるから。


柊ちゃんは、私が期待してしまっていたことを、さっそく話してくれた。

「あのさ、俺、なずなのこと気になってる」

「う、うん」

「……いや、好きかも。なずな、昔といい意味で変わってなくて、話しててなんかドキドキした。うまく言えないけど、今彼氏がいないなら、ほかの男とは付き合ってほしくないってすごい思ったんだ」
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