初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
彼の秘密
撮影のスタジオなんて、当然始めて来た。
思ったよりは小振りなところで、小さなビルのワンフロアを今日だけ撮影場所として使用しているという話だった。
それなら緊張も半減……するわけはなく、私はスタジオに着いて早々、やっぱり無理だと柊ちゃんに伝えていた。柊ちゃんからは、「ここまで来てなに言ってるんだ」と私の言葉は一蹴された。

柊ちゃんはさっきの電話の主の後輩の子と思われる人や、今日の撮影にかかわるスタッフの方々に私のことを今日のモデルだと紹介する。

後輩の子もスタッフさんも「急だったのにいい代役を見つけたね」なんて言う。うれしくない。どうせなら「そんなやつは使えないから帰ってもらえ」と言ってくれればよかったのに。


撮影はすぐに始まった。

私はスタッフさんに差し出されたミュール、サンダル、ピンヒールなど何足か履き、足だけの写真を何枚か撮ってもらった。


……撮影は緊張したけど、足だけだし、なにより、かわいい靴がたくさん履けたのは楽しかった。


撮影はこれで終わりです、とカメラマンさんから言われた時は、え、もう? なんて思ってしまった。



「なずな、お疲れ様。本当にありがとうな」

自分が履いてきた靴に履き替えていると、柊ちゃんがそう声をかけてくれた。


「俺、これから今の撮影のデータの確認があるんだけど、もしよかったらこのビルのとなりにある喫茶店で少し休んで待っててくれないか? 疲れただろうし、先に俺の家戻ってくれててもいいけど」
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