初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
「そりゃぁ、柊ちゃんが重度の足フェチでも構わないって言ったよ! でも、だからって、これは悲しいよ!」

「なずな?」

「フェチを直せとは言わないけど、私の気持ちももう少し考えてよ!」

私はお風呂場を飛び出し、柊ちゃんからタオルを奪い、雑に足元を拭くと、荷物をまとめた。


「帰る!」

柊ちゃんの話も聞かずに、私は自分の家へ帰った。

帰りの電車の中で、少し大人げない行動だったかもしれないとも思ったけど、柊ちゃんだって悪い。
私は半泣きでひとり暮らしをしているアパートまで帰った。



家に着いたころには辺りはすっかり暗くなっていた。まだそんなに遅い時間ではないのに、やっぱり冬は日が暮れるのが早い。おまけに空気がいつもより肌寒く感じた。

部屋の電気もつけずに、ベッドにうつぶせに倒れこむ。
涙が出る……ほどではないのだけれど、なんだか寂しいし、なにより不安になる。
もし明日、私の体に急激な状態異常が起こって、朝起きたら短足になっていたら、柊ちゃんはそれでも変わらず私のことを好きだと言ってくれるんだろうか。抱きしめてくれるんだろうか。


そんなことを思ってしばらくぼんやりとしていると。



「なずなっ」

コンコンというノックの音とともに、柊ちゃんの声が聞こえた。
柊ちゃん……家まで来てくれたんだ。


私はゆっくりと体を起こす。

でも、顔を合わせたらまた怒ってしまいそうで、自信がなくて。玄関先から、戸の向こうにいる柊ちゃんに「……うん」と返すのが精いっぱいだった。

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