初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
「あっ、雲梯も懐かしいな〜」

柊ちゃんの興味は今度はねずみ色の雲梯に移ったようで、雲梯ヤバい、と言い始めた。だからいったいなにがヤバいのかわからなかったけど、私はまた「そうだね」と返した。

すると柊ちゃんは私を見て、「覚えてる?」と問いかける。


「なにを?」

「なずなが、みんなといっしょに雲梯やり始めたのはいいけど、一番高いところで動けなくなっちゃって、ぶら下がったまま、ふぇーんって半泣きになってたこと」

「うそ⁉︎ そんなことあった⁉︎」

全然記憶にない。でも、私のどんくさいところは昔からだし、じゅうぶんありえる……。ちなみに柊ちゃんによると、そのあと担任の男の先生がやってきて、私を抱っこして救出してくれたらしい。


「柊ちゃん、記憶力いいよね。よくそんな、私自身が覚えていないようなことを」

「そりゃね。覚えてるよ。人生で初めて嫉妬を覚えた日だからな」

「嫉妬?」

「担任がなずなのこと抱っこして助けてるの見て、悔しかった。なずなも先生にぎゅって抱きついてるし」

「えっ……」

「本当は俺が助けたかったよ。でも、背が足りなくてなずなに届かないし。届いたとしても、たぶん抱っこできなかったし。あのころ俺、なずなより背低かったし」

なんだか恥ずかしいけど、背に関してはたしかにそうだったかもしれない。あのころはまだ、私は今みたいにやたら背が高かったわけじゃなかったけど、クラスでも背が低い方だった柊ちゃんよりは高かった。
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