初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
あっちで遊んでて、と言われた雛ちゃんだけど、それに対して駄々をこねる。

「いやだ〜ヒナもおてつだいする〜」

「はいはい。じゃあ流し台濡れたところ、拭いてくれる?」

「いやだ〜おきゃくさまにごあんないする〜」

今にも泣き出しそうな雛ちゃんに、柊ちゃんがにっこり笑って言う。

「じゃあ雛ちゃん、席に案内してもらってもいいかな?」

「うん! こちらへどーぞっ」

雛ちゃんは張り切って窓際の席の方まで歩いていく。雛ちゃんのお母さんと思われる女の人は、「すみません」と申しわけなさそうに言うけど、私はむしろ、雛ちゃんが案内してくれるのがかわいいしうれしかった。柊ちゃんも、聞くまでもなく楽しそうだった。柊ちゃん、子ども好きなんだろうな。私も好きだからうれしい。


私たちが席に着くと、雛ちゃんは「ごちゅうもんはどうしますかっ」と聞いてくれる。


「じゃあ、俺はコーヒー」

「私は、りんごジュースで」

はぁい、と答えたあと、雛ちゃんはカウンターの向こうにいるお母さんと思われる女性に、「おかあさん! コーヒーとりんごジュース!」と大きな声で言った。やっぱりお母さんだったんだね、なんて思った。


「雛ちゃんは何歳?」

やさしい声色で柊ちゃんがそう尋ねると、雛ちゃんは「ろくさい!」と答えた。


「そっかぁ。じゃああそこの小学校に通ってるの?」

「いま、ねんちょうさん!」

「そっかぁ。じゃあ来年から小学生なんだね。お兄ちゃんとお姉ちゃんもあそこの小学校に通ってたんだよ」
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