初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
「そうなの? おにいちゃんとおねえちゃんは、けっこんしてるの?」

「雛! こっちおいで!」

お母さんにそう言われ、雛ちゃんはトコトコとカウンターの向こうに歩いていく。


け、結婚かぁ……。そうなれたらもちろん幸せだと思うけど、再会してまだ間もないし、さすがにそこまでの話にはならないなぁ……。でも、私は柊ちゃんのお嫁さんになりたいって、たぶんこれからもずっと思っていくと思う。


「そうなれたらいいよな」

柊ちゃんも、私の心を見透かしたかのように 笑いながらそう言ってくれた。柊ちゃんも結婚を意識したりするのかな。そうだったらうれしいな……。結婚したら、いつかは雛ちゃんみたいにかわいい子どもが欲しい。もちろん男の子でもいい。なんて、それはさすがに先走りすぎか。


かわいいお店とかわいい雛ちゃんに癒されながら飲み物を待っていると、数分後、カウンターの奥から

「ヒナがもってくー!」

という元気な声が聞こえた。


柊ちゃんといっしょにカウンターの奥へ目を向けると、おぼんの上にコーヒーとりんごジュースをのせた雛ちゃんが慎重にこっちへ歩いてくる。最初は余裕そうだったけど、席までやってくるまでに雛ちゃんの両手はプルプルしてきて、うしろからいっしょについてくる雛ちゃんのお母さんもとても不安そうに雛ちゃんを見ている。


雛ちゃんが私たちの席に到着すると、
「ありがとう。よくがんばったね」
と言って、柊ちゃんは雛ちゃんが持っていたおぼんの上からコーヒーをさっと手に取った。熱いコーヒーをこぼすようなことがあったら雛ちゃんがやけどをして危ないと思ったからだろう。
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