初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
だけど雛ちゃん的には、飲み物を私たちに直接渡すところまでやりたかったらしい。
なので、りんごジュースは右手でつかんで、私に差し出そうとしてくれた。

でも。


「あっ」

コップは雛ちゃんの手からつるっとすべって、テーブルの上で倒れる。コップが割れなくてよかった。割れたら雛ちゃんにケガをさせてしまうかもしれなかった。


「お客様、申しわけありません! お洋服大丈夫ですか!」

「あ、ズボンにちょっとかかっただけなので全然大丈夫ですよ」

「雛! お姉さんに謝りなさい!」

「うわぁぁぁぁぁん」

「雛!」

「だ、大丈夫ですよ」

「うわぁぁぁぁぁん、おねえさんごめんなさいうわぁぁぁぁぁん」

「ほんとに大丈夫だよー、ちゃんと謝れてえらいね」

私はそう言って雛ちゃんの小さな頭をよしよしと撫でた。

とはいえ。りんごジュースは結構な量がズボンにかかってしまった。
雛ちゃんのお母さんは、衣服を私に貸そうとしてくれたけど、お店に貸せそうな衣服がないとのことで。


「大丈夫です、ほんとにちょっとかかっただけなので!」

そう言ってなんとかごまかし、カフェで時間を過ごし、ズボンがぐっしょり濡れているのを雛ちゃんと雛ちゃんのお母さんにバレないように上着でズボンの染みをなんとか隠し、私は柊ちゃんとお店をあとにした。


「じゃ、ズボン買いに行くか。車戻ろう」

お店を出てすぐに柊ちゃんがそう言ってくれた。

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